■ 人生の或る重大時期に、外界の某「精霊」が突然普通の體の裡に降生し、われわれに働きかける若しくは働きかけようとするが、その當人はそれを意識せず又は記憶がないのだと。

■ 若し私が、一作家の使命は人生の重大な事態の裡に己れの感ずる事柄を誠實に分析するに在ると考へぬならば、又若し私が自ら有用であると信ずる目的を立てなかったとしたら、私は此処で止め、そして、自分が續いて恐らく分別を失った幻影、或ひは俗に云へば病的な幻影の一聯の裡に感じた事柄を、述べようとは試みないであらう…。

■ 虚無は、と彼は云った。人々の云ふような意味では存在しないのだ。しかし、地はそれ自身、諸々の霊の総和を魂とする一の物質的物體だ。

■ 私のまはりで一切が形を變へて行った。私の話してゐた靈はもはや同じ外形ではなかった。それは一人の若者で、その後は私に思想を傳へるよりも、寧ろ私から思想を受け取ってゐた…。

■ 「おお、逃げないで下さい!」私は叫んだ…。「自然があなたと一緒に滅びてしまひますから!」 / 「世界は夜になった!」

■ 私は豫感を濫用したくはない。偶然は奇妙な事をするものだ。

■ 私は紙を貰ったので、長い間、知る限りの國語で書いた物語と詩句と碑銘を附けた數多の*像でもって、研究の記憶と夢の斷片との混じった一種の世界史を描かうと努めた。

■ おお、慄ろしいことだ!忌々しいことだ!それは私の顔であった、觀念化され擴大された私の全容姿であった…。

■ 「人間は高きより來り、低きよりは來ない。われわれはわれわれ自身を創ることができようか?此処では、われわれの工藝の逐次的進歩によって、地球外層の物質よりも更に微妙な物質に形を興べてゐるだけだ。」

■ 私に云はれた、乃至は私が意味を覺ったやうに思った言葉は斯くの如きであった。

■ 私の育てられた國は傳説と奇妙な迷信に溢れてゐた。

■ 自分の一生のあらゆる思ひ出が繋がるこれ等の詰まらぬ

■ 私には最高の解説者の如く、言葉が敢へて傳へ得ぬ乃至は表現するに成功し得ぬかの靈魂の秘密を聞くべく豫じめ定められた懺悔聴聞*の如くに思はれた。

■ 私は夢を固定し、その秘密を識ろうと決心した。私は心に云った、何故に、我が全意志力を*って遂にこれ等神秘の扉を打ち毀し、己れの感覺に従ふ代わりに之を支配しようとしないのか?

■ 私は夢の意義を探すに心を潜め、そしてこの不安は私の覺醒時の反省に影響を及ぼした。外界と内界の間には或る連繋が存在する、ただ不注意若しくは精神の混亂のみが、その明白な關系を歪曲するのだ。

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